ネタバレとか、容赦しない。
というわけで、続きからネタバレ注意だ。
あと本編から誤字脱字ないように、ほとんど本編に似せてセリフを抜いてきたから注意せよ。
あと本編から誤字脱字ないように、ほとんど本編に似せてセリフを抜いてきたから注意せよ。
「………そなたは誰か。新しい庭師なのか。」
「…ご、ごめんなさい。…勝手にお庭に立ち入ってすみません…。」
「………。……そなたは誰か。名乗るが良い。」
「う、…右代宮楼座といいます…。」
「…右代宮。………ほぅ。金蔵の一族の人間なのか。」
「え?あ、…はい!金蔵の娘です。こ、こんにちは…!」
「座るが良い。初めて訪れたものを庭へ招き、語らうのが妾の唯一の楽しみよ。……他に、何の楽しみもないがな。」
「…あの、………森の魔女、…ベアトリーチェですか……?」
「如何にも。妾がベアトリーチェである。」
(中略)
「………柵の向こうには、本当に狼などおらぬのか。」
「え?は、はい。狼なんて、動物園でも見たことないです。」
「動物園とは何か。」
「あ、…色んな動物が飼われているところです。ゾウとかキリンとかパンダとか、珍しい動物がいっぱいいますよ。」
「…………………。…動物園に、狼はいないのか。ならその、…怖くないかもしれんな。」
「狼がいたとしても、動物はみんな折りに入ってますから安全です。だから安心して見学できるんですよ。」
「……………。…それは妾とどう違うのか?」
「…………え?」
「妾は何者なのか。…皆は私のことをベアトリーチェと呼ぶ。…それは確かに、そなたの言うように、偉大な魔女の名前らしい。……しかし、それは妾ではないのだ。妾には魔法など何も使えぬ。……妾はソノ魔女の魂をこの見に封じられているだけなのだ。」
「………?」
「柵の外へ、…出てみますか?」
「………ほ、本当に狼はいないのか。」
「いないですよ。絶対平気ですから。」
「………………。…出たいぞ。だが、いつも門は閉まっている。」
「私が入ってきたところがあります。すり抜けられる隙間があるんです。」
「…そこを抜ければ、外の世界があるのか。」
「はい。」
「……………………狼は本当にいない?」
「くす。はい、いませんよ。」
「………………。」
「………妾は、もうここは嫌だ。…外へ出たい。そして妾が何者で、この世界はどうなっていて。…妾は何のために生まれてきたのかを、知りたい。」
「見たい。」
「……え?何を?」
「動物園が、見たいのだ。」
「………ぁ。」
「そなたと話すと、知らないことばかり出てくる。…妾は、学校なるものもわからぬし、動物園も知らぬ。映画館も知らぬ。遊園地も知らぬ。………そしてそれを知りたいと、心のそこから思う。…そなたは、妾をそこへ連れて行ってくれるのか?」
「え、……う、うん。」
「妾は、…もうベアトリーチェは嫌だ。妾が何者なのか、知りたい。ベアトリーチェではない、新しい人間をはじめたい。だから、ここから連れ出してほしい。………もう、紅茶もいらぬ。ドレスもいらぬ。金蔵とも会わぬ。……ここより妾を連れ出してくれ。楼座。」
そして、色々と苦労したけれど、幸いにも海に出ることができた。
今、島のどこにいるかは、相変わらず見当もつかなかったけれど、とにかく、こちら回りに進めば、必ずお屋敷へ帰れるとわかって、ちょっとだけ安心したわ。
もっとも、海に出たといっても、私たちは岩壁の上にいた。海岸はずっと下だったわ。
私はずっと森の中を歩いていて疲れていたから、たとえ岩浜であっても、空けた場所のほうがずっと歩きやすいだろうと考えた。
だから、何とかして岩壁を降りようと提案したの。
…一応危なそうだったし、他に案はないかと思って。
でも、ベアトリーチェは私の提案に何の疑いもなくうなずいた。
…年は無効のほうが上だろうに、まるで私を親鳥だと信じるアヒルが何かの雛のように、本当に素直に従ったわ。
私は岩壁を降りられる場所がないかと探した。
そして、崖が崩れて斜面を作っているところを見つけたの。
…ちょっと危なそうだけど、両手両足でしっかり這うようにして降りれば、多分大丈夫だと思った。
「……ここを降りましょう。気をつけないと危ないけど、とにかく海岸に下りて、あとは沿って歩けば、もう迷わずにすむと思うの。」
「うむ。楼座がそうするのならそうしようぞ。妾は迷うとやらも楽しいぞ。とても愉快だ。」
ついでに、崖から転げ落ちたらどれだけ危ないかも、想像がまったく及んでいないようだった。
私は重ねて注意を促す。
私は慎重に降りられる場所を窺った。
…高さは、…相当高く見えたわ。
多分10mくらいはあったんじゃないかと思う。
下から見ればきっと、お屋敷の屋根よりも低かったのかもしれないわね。
でも上から見たら、まるで東京タワーの展望室から眼下を見下ろすような気分だった。
でもベアトリーチェは相変わらず、全然怖がっている様子がなかったわ。
…まるで
、高いところは危ないということすら教えられていなかったような感じ。
……いえ、彼女は自分が魔女だと信じていて、空が飛べるから危なくないと本当に信じていたのかもしれない。
「気をつけてくださいね。…結構、高いから。」
「うむ。気をつけるぞ。下へ降りたら、海があるな。そこに水族館があるのか。」
「いえ、この島には水族館はないですよ。でも海にはたくさんの魚がいると思います。」
「そうか。魚はいるのか。そなたが話してくれた、…えぇと、クジラとかイルカとかペンギンとかはいるのか。」
「いえ、そういうのは水族館に行かないといないです。……水族館は島を出ないとないですよ。」
「そうなのか。…だが楽しみだ。クジラはどんな魚なのか。」
「えっと、…すっごく大きな魚で、あれ、哺乳類かな?それで潮を吹いたりします。」
「ほう。ならばイルカは。」
「えっと、頭のいい魚で、あれ…、これも哺乳類だっけ?とても頭が良くて芸とかを覚えられるんですよ。」
「ほほぅ。ならばペンギンはどうなのか。」
「えっと、…あれ、これは鳥類だっけ…。」
「何だ。水族館なのに、さっきから魚が出てこんぞ?」
「えーとえーと…。ま、その、魚だけでなく、色々な海の生き物がいっぱいいるんですよ。」
「ほほぅ。それはとても楽しみだっ。………ん、」
わ、ひゃっ。
彼女が聞きようによってはこっけいな、…慌てた短い声、…いえ、多分それは悲鳴だったのかも。
そんな声を唐突にあげた。
……彼女の体が岩壁から離れて、すぅっと落ちていった。
私はすぐに言おうと思ったわ。
だからあれほど注意してくださいって言ったのに!って。
……子供の考えよね。何かが起こったとき、真っ先にそれを起こることで、自分に過失がないことを示そうとする言い逃れ。
もちろん私も口にしたわ。
大丈夫?だからあれほど注意しなさいって……。
(中略)
「えぇ、死んだわッ!!岩浜だったもの、尖った危険な岩がたくさんむき出しになっていた!!
目を見開いたまま、すごい血があふれ出して…たちまち真っ赤なじゅうたんを広げていった…!
声をかけたわ、揺さぶったわ!!でも、彼女は返事はおろか、瞬きすらも、……いえ、瞼を閉じることさえしてくれなかった!!私が悪いのよ!彼女はドレス姿だったのよ?!あんな動きにくい格好なのを知っていたのに、私が岩壁を降りようなんて言ってしまったから!彼女はすごい素直だったから、私の言うことに何の疑いもせずにしたがって…!!」
~メタ世界~
「……いつまで死んでいるつもりか。いい加減に目を覚ませ。まったく、妾の与り知れぬところで勝手に肉塊に姿を変えおって。」
「お前ぇのとこの太ももの姉ちゃんとイチャついてただけだぜ。…それより、こりゃどういうことだ。」
「うむ。見たままよ。……妾は足を踏み外して転げ落し、“死んだ”。」
「何だとぉ…。………19人目として登場しておきながら、……死んだだと…?ふざけるな、そんなわけはない…!楼座叔母さんは子供だったしあせってた。医者がいたわけでもない。多分、死んだと誤解しただけで、お前は多分その、仮死状態か何かで生きていたんだ。そうだろッ?!」
そんなはずはないんだ。
どうせ生きてるんだ。
じゃなきゃこいつがここにいるわけがないじゃないか…!
…子供時代の楼座叔母さんが、泣きながらベアトリーチェの体を揺さぶっている。
俺もその顔を覗き込むが、……………目は見開かれたままで、本当にしたいそのもの。
…仮死状態に違いないなんて曖昧なことで誤魔化したいが、…どう見ても。仮どころか、本当に死んでいるようにしか見えない。
ベアトリーチェは、あの岩壁のあの高さから間ッさかさまに落ち、…あの尖った岩の先端で頭部を強打した。…死ぬだろ、…あの高さで、…こんな岩じゃ…。
だが、認めるわけにはいかない…。
どんなに死んでいるように見えても、こいつは生きているはずなんだ…!
そしてムカつくこのクソ魔女になった!それで全てのつじつまが合うんだ。
「…そう感嘆には騙されねぇぞ。赤で復唱できるか?!確かに死んだと!!どうせ生きてるんだろ?!見え見えだぜ!!」
「それのどこが生きているように見えるというのか。『間違いなく死んでいる(赤字』!」
「…………………むぅぅぅ…。」
「なら、お前は何者だってんだ。お前はたった今、死んだだろうが!まさか魔法でよみがえったとか言い出すんじゃねぇだろうなぁ?!」
「くっくっくっく。すでに説明したと思うがな。…そこに倒れている妾は、確かに魂は妾だが、その体は妾を現世へ繋ぎ止めておく肉の檻に過ぎなかったと。そしてその肉の檻が、こうして壊れた。…それはどういうことかわかるか?」
「……もうさっぱりだぜ。好きなだけ魔女っ子トークに興じろよ。茶菓の変わりに聞いてやらぁ!なんだ空っぽか。おい、紅茶のお代わりを頼むぜ。」
「くっくっくっく!ろのうぇ、客人が紅茶をお望みだ。」
(中略)
「ちょっと…、目を覚ましてよ…!!ベアトリーチェ…!!」
あぁ、私はあそこから転落して死んだんだな…。
私はしばらくの間、そうだと信じた。…そして楼座が長い時間を骸の傍らで過ごし、駆け出していくのを見届けてから。
…ようやく自分は、そこの骸とは別の存在の人格であることを理解する。
「そうか。妾は、…妾か。…ようやく、金蔵の戒めから逃れられたのか…。」
「楼座。そなたは妾を死なせてしまったと後悔しているだろうが。妾にとっては感謝したいくらいよ。くっくっくっく…!」
私は人の姿を崩す。
そして数匹の黄金の蝶に姿を変えた。
うむ、今の私の弱々しい魔力では、この程度の姿のほうが楽でいい。
とにかくゆっくり時間を掛けて養生し、元の力を取り戻そう。
…これまでの借りを、金蔵にどう返してやるかを思案しながら。
肉体を捨てた妾が、あの姿を取り戻すには、…多分百日、二百日では及ぶまい。
…それこそ千日、あるいはさらにを必要とするだろう。
「…それで、お前は黄金の蝶に姿を変え、森の中に潜んで魔力が回復するのを待った。ってのか?」
「そういうことだ。そなたを嘲笑するためにこの姿をとるが、本来は蝶たちの姿でいたほうが魔力的には楽なのだ。」
(中略)
「辛く長い年月であった…。妾は黄金の蝶の姿のまま長く日々を送り、金蔵の屋敷を見つけ、やつの日常を見守った。どのように仕返しをしてやろうか、それを思案することだけを日々の楽しみに生きてきた。
…妾にとって幸運だったのは、その間の20年間。金蔵は妾を探し出し捕らえるあらゆる秘術にことごとく失敗した点だったか。人間に起こせる軌跡の数などたかが知れている。妾をあれだけ長く捕らえていただけでも、十分身に過ぎた奇跡だ。そう難語も捕らえられれは堪えられぬわ。」
(中略)
「ああああぁあ!!そんな魔法話は絶対ぇ信じねぇぞ!じゃあお前は誰なんだ!お前は崖から転落して死んだんだろうが!魂が抜け出して蝶になって森へ?そんなのあるわけねぇだろうが!!だがお前はここにいる!誰だってんだ!!お前こそが19人目じゃねぇのかよ!?」
「そうであるな、妾こそが19人目であろうな。くっくっくっく!だが駄目だぜ?全然駄目だぁ!!」
『この六軒島に19人以上の人間は存在しない!(赤字』
以上!
「…ご、ごめんなさい。…勝手にお庭に立ち入ってすみません…。」
「………。……そなたは誰か。名乗るが良い。」
「う、…右代宮楼座といいます…。」
「…右代宮。………ほぅ。金蔵の一族の人間なのか。」
「え?あ、…はい!金蔵の娘です。こ、こんにちは…!」
「座るが良い。初めて訪れたものを庭へ招き、語らうのが妾の唯一の楽しみよ。……他に、何の楽しみもないがな。」
「…あの、………森の魔女、…ベアトリーチェですか……?」
「如何にも。妾がベアトリーチェである。」
(中略)
「………柵の向こうには、本当に狼などおらぬのか。」
「え?は、はい。狼なんて、動物園でも見たことないです。」
「動物園とは何か。」
「あ、…色んな動物が飼われているところです。ゾウとかキリンとかパンダとか、珍しい動物がいっぱいいますよ。」
「…………………。…動物園に、狼はいないのか。ならその、…怖くないかもしれんな。」
「狼がいたとしても、動物はみんな折りに入ってますから安全です。だから安心して見学できるんですよ。」
「……………。…それは妾とどう違うのか?」
「…………え?」
「妾は何者なのか。…皆は私のことをベアトリーチェと呼ぶ。…それは確かに、そなたの言うように、偉大な魔女の名前らしい。……しかし、それは妾ではないのだ。妾には魔法など何も使えぬ。……妾はソノ魔女の魂をこの見に封じられているだけなのだ。」
「………?」
「柵の外へ、…出てみますか?」
「………ほ、本当に狼はいないのか。」
「いないですよ。絶対平気ですから。」
「………………。…出たいぞ。だが、いつも門は閉まっている。」
「私が入ってきたところがあります。すり抜けられる隙間があるんです。」
「…そこを抜ければ、外の世界があるのか。」
「はい。」
「……………………狼は本当にいない?」
「くす。はい、いませんよ。」
「………………。」
「………妾は、もうここは嫌だ。…外へ出たい。そして妾が何者で、この世界はどうなっていて。…妾は何のために生まれてきたのかを、知りたい。」
「見たい。」
「……え?何を?」
「動物園が、見たいのだ。」
「………ぁ。」
「そなたと話すと、知らないことばかり出てくる。…妾は、学校なるものもわからぬし、動物園も知らぬ。映画館も知らぬ。遊園地も知らぬ。………そしてそれを知りたいと、心のそこから思う。…そなたは、妾をそこへ連れて行ってくれるのか?」
「え、……う、うん。」
「妾は、…もうベアトリーチェは嫌だ。妾が何者なのか、知りたい。ベアトリーチェではない、新しい人間をはじめたい。だから、ここから連れ出してほしい。………もう、紅茶もいらぬ。ドレスもいらぬ。金蔵とも会わぬ。……ここより妾を連れ出してくれ。楼座。」
そして、色々と苦労したけれど、幸いにも海に出ることができた。
今、島のどこにいるかは、相変わらず見当もつかなかったけれど、とにかく、こちら回りに進めば、必ずお屋敷へ帰れるとわかって、ちょっとだけ安心したわ。
もっとも、海に出たといっても、私たちは岩壁の上にいた。海岸はずっと下だったわ。
私はずっと森の中を歩いていて疲れていたから、たとえ岩浜であっても、空けた場所のほうがずっと歩きやすいだろうと考えた。
だから、何とかして岩壁を降りようと提案したの。
…一応危なそうだったし、他に案はないかと思って。
でも、ベアトリーチェは私の提案に何の疑いもなくうなずいた。
…年は無効のほうが上だろうに、まるで私を親鳥だと信じるアヒルが何かの雛のように、本当に素直に従ったわ。
私は岩壁を降りられる場所がないかと探した。
そして、崖が崩れて斜面を作っているところを見つけたの。
…ちょっと危なそうだけど、両手両足でしっかり這うようにして降りれば、多分大丈夫だと思った。
「……ここを降りましょう。気をつけないと危ないけど、とにかく海岸に下りて、あとは沿って歩けば、もう迷わずにすむと思うの。」
「うむ。楼座がそうするのならそうしようぞ。妾は迷うとやらも楽しいぞ。とても愉快だ。」
ついでに、崖から転げ落ちたらどれだけ危ないかも、想像がまったく及んでいないようだった。
私は重ねて注意を促す。
私は慎重に降りられる場所を窺った。
…高さは、…相当高く見えたわ。
多分10mくらいはあったんじゃないかと思う。
下から見ればきっと、お屋敷の屋根よりも低かったのかもしれないわね。
でも上から見たら、まるで東京タワーの展望室から眼下を見下ろすような気分だった。
でもベアトリーチェは相変わらず、全然怖がっている様子がなかったわ。
…まるで
、高いところは危ないということすら教えられていなかったような感じ。
……いえ、彼女は自分が魔女だと信じていて、空が飛べるから危なくないと本当に信じていたのかもしれない。
「気をつけてくださいね。…結構、高いから。」
「うむ。気をつけるぞ。下へ降りたら、海があるな。そこに水族館があるのか。」
「いえ、この島には水族館はないですよ。でも海にはたくさんの魚がいると思います。」
「そうか。魚はいるのか。そなたが話してくれた、…えぇと、クジラとかイルカとかペンギンとかはいるのか。」
「いえ、そういうのは水族館に行かないといないです。……水族館は島を出ないとないですよ。」
「そうなのか。…だが楽しみだ。クジラはどんな魚なのか。」
「えっと、…すっごく大きな魚で、あれ、哺乳類かな?それで潮を吹いたりします。」
「ほう。ならばイルカは。」
「えっと、頭のいい魚で、あれ…、これも哺乳類だっけ?とても頭が良くて芸とかを覚えられるんですよ。」
「ほほぅ。ならばペンギンはどうなのか。」
「えっと、…あれ、これは鳥類だっけ…。」
「何だ。水族館なのに、さっきから魚が出てこんぞ?」
「えーとえーと…。ま、その、魚だけでなく、色々な海の生き物がいっぱいいるんですよ。」
「ほほぅ。それはとても楽しみだっ。………ん、」
わ、ひゃっ。
彼女が聞きようによってはこっけいな、…慌てた短い声、…いえ、多分それは悲鳴だったのかも。
そんな声を唐突にあげた。
……彼女の体が岩壁から離れて、すぅっと落ちていった。
私はすぐに言おうと思ったわ。
だからあれほど注意してくださいって言ったのに!って。
……子供の考えよね。何かが起こったとき、真っ先にそれを起こることで、自分に過失がないことを示そうとする言い逃れ。
もちろん私も口にしたわ。
大丈夫?だからあれほど注意しなさいって……。
(中略)
「えぇ、死んだわッ!!岩浜だったもの、尖った危険な岩がたくさんむき出しになっていた!!
目を見開いたまま、すごい血があふれ出して…たちまち真っ赤なじゅうたんを広げていった…!
声をかけたわ、揺さぶったわ!!でも、彼女は返事はおろか、瞬きすらも、……いえ、瞼を閉じることさえしてくれなかった!!私が悪いのよ!彼女はドレス姿だったのよ?!あんな動きにくい格好なのを知っていたのに、私が岩壁を降りようなんて言ってしまったから!彼女はすごい素直だったから、私の言うことに何の疑いもせずにしたがって…!!」
~メタ世界~
「……いつまで死んでいるつもりか。いい加減に目を覚ませ。まったく、妾の与り知れぬところで勝手に肉塊に姿を変えおって。」
「お前ぇのとこの太ももの姉ちゃんとイチャついてただけだぜ。…それより、こりゃどういうことだ。」
「うむ。見たままよ。……妾は足を踏み外して転げ落し、“死んだ”。」
「何だとぉ…。………19人目として登場しておきながら、……死んだだと…?ふざけるな、そんなわけはない…!楼座叔母さんは子供だったしあせってた。医者がいたわけでもない。多分、死んだと誤解しただけで、お前は多分その、仮死状態か何かで生きていたんだ。そうだろッ?!」
そんなはずはないんだ。
どうせ生きてるんだ。
じゃなきゃこいつがここにいるわけがないじゃないか…!
…子供時代の楼座叔母さんが、泣きながらベアトリーチェの体を揺さぶっている。
俺もその顔を覗き込むが、……………目は見開かれたままで、本当にしたいそのもの。
…仮死状態に違いないなんて曖昧なことで誤魔化したいが、…どう見ても。仮どころか、本当に死んでいるようにしか見えない。
ベアトリーチェは、あの岩壁のあの高さから間ッさかさまに落ち、…あの尖った岩の先端で頭部を強打した。…死ぬだろ、…あの高さで、…こんな岩じゃ…。
だが、認めるわけにはいかない…。
どんなに死んでいるように見えても、こいつは生きているはずなんだ…!
そしてムカつくこのクソ魔女になった!それで全てのつじつまが合うんだ。
「…そう感嘆には騙されねぇぞ。赤で復唱できるか?!確かに死んだと!!どうせ生きてるんだろ?!見え見えだぜ!!」
「それのどこが生きているように見えるというのか。『間違いなく死んでいる(赤字』!」
「…………………むぅぅぅ…。」
「なら、お前は何者だってんだ。お前はたった今、死んだだろうが!まさか魔法でよみがえったとか言い出すんじゃねぇだろうなぁ?!」
「くっくっくっく。すでに説明したと思うがな。…そこに倒れている妾は、確かに魂は妾だが、その体は妾を現世へ繋ぎ止めておく肉の檻に過ぎなかったと。そしてその肉の檻が、こうして壊れた。…それはどういうことかわかるか?」
「……もうさっぱりだぜ。好きなだけ魔女っ子トークに興じろよ。茶菓の変わりに聞いてやらぁ!なんだ空っぽか。おい、紅茶のお代わりを頼むぜ。」
「くっくっくっく!ろのうぇ、客人が紅茶をお望みだ。」
(中略)
「ちょっと…、目を覚ましてよ…!!ベアトリーチェ…!!」
あぁ、私はあそこから転落して死んだんだな…。
私はしばらくの間、そうだと信じた。…そして楼座が長い時間を骸の傍らで過ごし、駆け出していくのを見届けてから。
…ようやく自分は、そこの骸とは別の存在の人格であることを理解する。
「そうか。妾は、…妾か。…ようやく、金蔵の戒めから逃れられたのか…。」
「楼座。そなたは妾を死なせてしまったと後悔しているだろうが。妾にとっては感謝したいくらいよ。くっくっくっく…!」
私は人の姿を崩す。
そして数匹の黄金の蝶に姿を変えた。
うむ、今の私の弱々しい魔力では、この程度の姿のほうが楽でいい。
とにかくゆっくり時間を掛けて養生し、元の力を取り戻そう。
…これまでの借りを、金蔵にどう返してやるかを思案しながら。
肉体を捨てた妾が、あの姿を取り戻すには、…多分百日、二百日では及ぶまい。
…それこそ千日、あるいはさらにを必要とするだろう。
「…それで、お前は黄金の蝶に姿を変え、森の中に潜んで魔力が回復するのを待った。ってのか?」
「そういうことだ。そなたを嘲笑するためにこの姿をとるが、本来は蝶たちの姿でいたほうが魔力的には楽なのだ。」
(中略)
「辛く長い年月であった…。妾は黄金の蝶の姿のまま長く日々を送り、金蔵の屋敷を見つけ、やつの日常を見守った。どのように仕返しをしてやろうか、それを思案することだけを日々の楽しみに生きてきた。
…妾にとって幸運だったのは、その間の20年間。金蔵は妾を探し出し捕らえるあらゆる秘術にことごとく失敗した点だったか。人間に起こせる軌跡の数などたかが知れている。妾をあれだけ長く捕らえていただけでも、十分身に過ぎた奇跡だ。そう難語も捕らえられれは堪えられぬわ。」
(中略)
「ああああぁあ!!そんな魔法話は絶対ぇ信じねぇぞ!じゃあお前は誰なんだ!お前は崖から転落して死んだんだろうが!魂が抜け出して蝶になって森へ?そんなのあるわけねぇだろうが!!だがお前はここにいる!誰だってんだ!!お前こそが19人目じゃねぇのかよ!?」
「そうであるな、妾こそが19人目であろうな。くっくっくっく!だが駄目だぜ?全然駄目だぁ!!」
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